Q&A

機関リポジトリについてのよくある質問にお答えします。   

  全般/著作権関連


   
     ■全般的なもの   
Q.1 学術情報リポジトリとは何ですか?   
Q.2 他大学の状況を教えてください。   
Q.3 なぜリポジトリが必要なのですか?   
Q.4 どのようなメリットがありますか?   
Q.5 オープンアクセスとは何ですか?
Q.6 電子ジャーナルがあれば、リポジトリはいらないのではないですか?   
Q.7 個人や所属部署のHPで既に論文を載せているので、重複して載せなくてもいいのではないでしょうか?   
Q.8 どのような論文が対象になりますか?たとえば雑誌に投稿して受理されなかった論文は登録できますか?   
Q.9 誰がデータを提供できるのでしょうか?
Q.10 登録可能なファイル形式は何でしょうか?   
Q.11 登録した論文の訂正は可能でしょうか?



   ■著作権関連のもの
Q.12 著作権法上問題はないのですか?
Q.13 二重投稿にならないのですか?
Q.14 海外出版社・学協会の対応は?
Q.15 国内出版社・学協会の対応は?
Q.16 著者最終版(ポストプリント)(※)とは何ですか?  
Q.17 機関リポジトリに登録すると論文の著作権を移譲したことになりますか?   
Q.18 電子ジャーナルからダウンロードしたものを登録できますか?   
Q.19 機関リポジトリを出典とみなせますか?

■ 全般的なもの

   Q1: 学術情報リポジトリとは何ですか? (2008.3.19更新)

 A1: 「リポジトリ(repository)」の語源は「ponere【置く(という意味のラテン語)】」に「re-【再び】」と「-ory【場所】」を組み合わせた言葉で、もともと「貯蔵庫」「容器」「収納庫」などの意味を持っています。コンピュータ用語では「データを体系的に管理・保管する場所」を意味します。 
 大学や研究機関においては「学術情報リポジトリ」として各機関で生産された様々な学術情報を収集・蓄積し、インターネット上で公開するシステムの構築が進められています。学術情報の具体例としては研究紀要論文・学術雑誌採択論文・研究報告書・学会発表資料・会議録・学位論文なとの研究成果物、シラバス・講義資料・E-Learning用コンテンツなどの教育成果物があげられます。 


   Q2: 他機関の状況を教えてください。

 A2: 2007年5月現在、世界の約880の大学が機関リポジトリを運用しています。国内でも約70の大学がすでに公開を開始しています。国内では早稲田大学千葉大学北海道大学などが先行して取り組み、医科系では東邦大学東京歯科大学旭川医科大学、 東京慈恵会医科大学などがリポジトリを公開しています。 
 国内のリポジトリ一覧 http://www.nii.ac.jp/irp/list/
 海外のリポジトリ一覧 http://roar.eprints.org/index.php


   Q3: なぜリポジトリが必要なのですか?

 A3: いくつかの理由が考えられますが、学術情報の流通の問題は大きなきっかけといわれています。近年大手商業出版社の寡占化による学術雑誌の価格高騰を受け、多くの大学では一部の雑誌の購入中止を余儀なくされています。それに対し1990年代にはインターネットの普及を背景として学術情報に対するオープンアクセス運動が始まりました。 それらの動きを背景に機関リポジトリを世界規模で稼動することで、商業出版社に独占されていた学術情報流通の主導権を研究コミュニティに取り戻そうという動きが拡がっています。それにより研究者間の学術情報コミュニケーションの円滑な流通と研究活動の活性化が期待されています。


   Q4: どのようなメリットがありますか?

 A4: 研究者、大学、社会それぞれの立場の人たちにメリットがあります。

 ** 研究者にとって **
 自分の研究・教育成果を新たなルートで世界へ発信することができます。またGoogle Scholarなどから検索可能なためより多くの人々、世界の研究者から読まれることが期待され、引用率の向上が期待できます。また研究者自身や各教室による研究・教育成果の保存・管理の負担が軽減されます。
 ** 大学にとって **
 研究・教育成果を公開することで社会に対して説明責任を履行し、人々の健康に貢献することができます。学内で生産された学術情報を一元的に管理し、恒久的に保存することができます。またそれらの学術情報を社会に向かって発信することで、大学のブランド力をアピールし知名度を向上させることができます。
 ** 社会にとって **
 一般の人々や世界の研究者たちが無償で研究・教育成果を利用できるようになります。

   Q5: オープンアクセスとは何ですか?

 A5: 学術情報を商業ベースから研究者に引き戻すため、学術論文をインターネット上で無料公開し誰でも自由に利用できるようにするものです。学術雑誌そのものをオープンアクセス化する場合と、機関リポジトリ等が著者から提供を受けて登録・公開する場合の2通りがあります。いずれにしろ著作権は著者が保持します。 


   Q6: 電子ジャーナルがあれば、リポジトリはいらないのではないですか?   

 A6: 電子ジャーナルの価格が毎年上がり続けている状況では、現在購読している学術雑誌、電子ジャーナルを永続的に購読できるという保障はありません。自身の研究・教育成果物を恒久的に保存するためにも、必要なシステムだと考えられます。 


   Q7: 個人や所属部署のHPで既に論文を載せているので、重複して載せなくてもいいのではないでしょうか?

 A7: リポジトリに登録することによって、大学にとって学内で生産された学術情報を一元的に公開できるというメリットがあります。またデータにはメタデータ(書誌情報)を付与しますのでインターネットから検索される頻度が向上します。データについては恒久的な保存が保証されます。 


   Q8: どのような論文が対象になりますか?たとえば雑誌に投稿して受理されなかった論文は登録できますか?

 A8: リポジトリに登録するときに「公表済みの資料」、査読が完了し出版が決まった論文が対象です。従って受理されなかった論文は登録できません。 


   Q9: 誰がデータを提供できるのでしょうか?

 A9: 大学の教職員および大学院生を想定していますが、大学の方針により異なります。 


   Q10: 登録可能なファイル形式は何でしょうか?

   A10: 原則としてはどのような形式にも対応可能です。 


   Q11: 登録した論文の訂正は可能でしょうか?

 A11: 雑誌や紀要類で既に出版されたものは正誤表で対応することになると考えています。 

   
   

■ 著作権関連のもの

   Q12: 著作権法上問題はないのですか?

 A12: 雑誌に掲載された論文の著作権は、出版社に委譲されるケースと、著者が持ち続けるケースとがあります。著作権が著者本人にある場合でしたら、著者の許諾により公開が可能です。また著作権が著者にあり、共著者がいる場合は共著者の方の同意も必要です。
  著作権が出版社や学会にある場合は、出版社や学会の許諾があったとしても共著者への同意確認は礼儀上あったほうが無難です。共著者への確認作業は著者自身で行うことが一般的です。


   Q13: 二重投稿にならないのですか?

 A13: 機関リポジトリには、ジャーナルへの掲載情報(雑誌名、巻号ページ、発行年等)を明記しますので、二重投稿とはなりません。


   Q14: 海外出版社・学協会の対応は?

 A14: 世界の出版社を対象に調査した結果によれば、90%以上の雑誌においては、著者が自分の論文を、自分の所属機関のサイトで保存・公開することを認めています。
  またElsevier、Springer、Wileyなどは著者最終版()まで、Blackwell、Natureなどはプレプリント(掲載許諾される前の原稿)までを認めるなど、海外の主要出版社の多くが、著者版(著者の手元にある原稿)であれば学術リポジトリへの登録を認めています。  
  また、APS (米国物理学会)、AIP (米国物理協会)、IEEE (米国電気電子学会)などの学協会は、各種条件はありますが出版社版(出版社が編集・レイアウトした版)を学術リポジトリに登録することを認めています。  
   SHERPA/RoMEO(学協会著作権ポリシーデータベース) http://www.sherpa.ac.uk/romeo/index.php


   Q15: 国内出版社・学協会の対応は?

 A15: 国内学協会への登録を認めています。また学術リポジトリへの論文掲載許諾のために、投稿規程を改正しているところが増えています。 

   国内学協会著作権ポリシーデータベース(SCPJ) http://scpj.tulips.tsukuba.ac.jp/


   Q16: 著者最終版(ポストプリント)(※)とは何ですか?   

 A16: 学術雑誌に投稿した論文には、著者版と、出版社版があります。著者版のうち、査読が済み掲載許諾を受けることになった最終原稿を「著者最終版(ポストプリント)」とよんでいます。この原稿が雑誌に掲載されるレイアウトに組版され、出版社版として冊子体や電子ジャーナルなどの媒体で販売されます。
  多くの出版社は出版社版を公開することを認めないかわりに、著者版の公開を認めています。 出版社から登録を許可されやすい著者版の中で、著者最終版は最も出版社版に内容が近く、信頼できる版といえます。


   Q17: 機関リポジトリに登録すると論文の著作権を移譲したことになりますか?

 A17: 登録しても著作権は著作権者に留保されます。


   Q18: 電子ジャーナルからダウンロードしたものを登録できますか?

 A18: 出版社で編集されたものですので出版社が認めた場合のみ、登録することができます。ただし現状では著者最終版までしか認めていない出版社が多くを占めます。


   Q19: 機関リポジトリを出典とみなせますか?

 A19: 掲載雑誌が存在する場合は、現状ではそちらを出典として優先することになるでしょう。